ニューキヤノネットQL19は、1971年にキヤノンから発売されたコンパクトレンジファインダーカメラ。
初代キャノネットやQL17やQL19など、いろいろな種類があってわかりにくいキャノネットシリーズですが、機能的にはレンズの明るさやクイックローディングの有無ぐらいの差で、大きな違いはないように思います。
ニューキヤノネットQL19は、ニューキヤノネットQL17の廉価版のような立ち位置で、その違いはレンズが40mm/f1.7から45mm/f1.9になっているだけ。
これだけの違いのために、わざわざカメラを生産販売するなんて、なんて贅沢な時代なんでしょうか。
ニューキヤノネットQL19 機能と使い方
ニューキヤノネットQL19が発売された1971年は、ニコンF2やキヤノンF-1やライカM5といった、各社のフラッグシップ機が発売された年でもあります。
大手カメラメーカーは一眼レフカメラの開発に注力し、ライカはレンジファインダーにこだわり続ける。
そんな時代のなかニューキヤノネットQL19は、女性でも初心者でも扱いやすいコンパクトなレンジファインダー機として誕生したのでした。
機能性や写りなど、このカメラを語るとき上での切り口は人によっていくらでも出てきそうですが、ぼく的にはなんといってもこのデザインが好き。
「Canonet」のフォントや直線的なデザインがクラシカルでとてもカッコいいです。
欲をいえば、「Canon」のロゴがキヤノンF-1などのように、細字のものだったらなお良しでした。
カメラに限らず現代のデザインは車でも建築でもカメラでも、曲線的なものが多い気がします。
それはそれで未来的な雰囲気があっていいのですが、個人的には直線的で少し野暮ったくもあり、無骨なデザインが好き。
シャッターがレンズに組み込まれているレンズシャッター式カメラは、レンズの鏡胴をクルクルして撮影設定をするため、カメラの軍幹部はスッキリしています。
赤字のAを中央に合わせるとシャッタースピード優先機能がONになります。
それ以外のときは普通の機械式カメラと同じようにマニュアルでの設定が可能です。
レンズの鏡胴はプラスチックパーツばかりで若干チープな造りに見える一方で、ボディ全体は綺麗なクロームメッキ仕上げになっていて美しいです。
キヤノンが独自に開発したQL(Quick Loading)機構を搭載し、フィルムの先端部を定位置におくだけで、誰もが簡単にフィルム装填ができるようになっていますが、しっかり装填できているのか少し不安になります。
ファインダー内の右側には、シャッタースピード優先機能にしたときだけ使える露出計が付いていて、設定したシャッタースピードに適したF値が示されるようになっています。
マニュアル設定のときに露出計を使えないのはちょっと残念ですが、ファインダーはニコンS2やS3なんかよりもクリアで見やすいと思いました。
家にあるコンパクトなカメラと比較してみるとこんな感じになります。
ニコンS3よりは少し小さいぐらい。
重さは620gもあり、持った印象は結構ズッシリしています。
ニューキヤノネットQL19で実写
キヤノンのコンパクトレンジファインダー機はどのような写りを見せてくれるのか。
ニューキヤノネットQL19 + FUJICOLOR 100の組み合わせで撮影してきました。
上の写真はシャッタースピード優先機能で撮影。
発売から50年以上が経過したカメラの電子制御機能の精度に関しては半信半疑でしたが、そこは世界に誇るキヤノンの技術力。
しっかり撮影できていました。
しかし、露出メーターは若干アンダー気味だったので、ISO感度を一段高く設定することで適正値に近づけています。
写りの特徴としては、ハイコントラストでコッテリ濃厚であると言えます。
しかしながら雪が黄色い…。好みがわかれそうなぐらい黄色味が強くて暖色系の仕上がりです。
秋とか、夕方の光を撮ったら雰囲気のある写真になりそうですが、午前中に撮影した雪景色の写真はもう少し寒色系のほうがいいです。
上と下の写真はLightroomで少しだけ色温度を下げました。
個人的にはこれぐらいが好み。
色味の個性は強めですが、雪の質感がしっかり出ていて、解像感の優れた良いレンズだなと思います。
この写真は一番お気に入りなんですが、雲のレイヤー感や端の繊細な質感がうまく表現されていてとても良いです。
コンパクトなのに、想像以上の写りを見せてくれました。
おわり
ニューキヤノネットQL19の中古価格はかなり安くて1万円以内で買えるので、初めてのフィルムカメラとしても、レンジファインダーを使ってみたいけどいきなり高価なライカを買うのは気が引けるって人にオススメかもしれません。
ただし、軽いカメラではないので、軽いのを探している人は、ローライ35やオリンパスペンシリーズなどのコンパクトカメラのほうがよいです。
参考文献:CANON CAMERA MUSEUM