フィルムカメラのニコン S3を持って、数日かけて東京の名建築巡りをしてきました。
巡った場所は、神田・竹橋周辺、上野駅周辺、池袋駅周辺、丸の内周辺などさまざま。
レンズは、NIKKOR S・C 50mm F1.4と、世界の中古カメラ市で手に入れたばかりのW-NIKKOR C 3.5mm F2.5を使いました。
外観をサラッと見学しただけになってしまったところや、50mmレンズしか持っていなくて美しい建築を写しきれなかった場所もあって、やや不完全燃焼なのですが、とりあえずまとめてみたいと思います。
神田・竹橋周辺
神田・竹橋周辺からは、東京国立近代美術館と学士会館の2つの建築です。
東京国立近代美術館
企画展「中平卓馬 火―氾濫」を観るために初めて訪れた東京国立近代美術館。
シンプルで重厚なコンクリート造りのモダニズム建築です。
庇の裏側の凸凹模様には日本の伝統建築の要素が用いられ、モダン×和の融合した造りに。
東京国立近代美術館のWebサイトには以下のように書かれています。
谷口は自著『建築に生きる』(1974年)の中で、竹橋という場所は江戸城の濠と丸の内ビル街に近く、「過去の日本と近代都市の東京が接触する接点にある」と述べています。
東京国立近代美術館
この土地の特性を反映させた素晴らしい建築でした。
- 竣工:昭和44年(1969年)
- 設計:谷口吉郎
- 指定・登録:ー
- 住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
学士会館
学士会館は、1928年に完成した4階建ての旧館と、1937年に完成した5階建ての新館とで構成されています。
上の写真でも微妙に違いがわかると思いますが、旧館と新館は外壁の仕上げが異なっています。
旧館はスクラッチタイルという仕上げで、目地がくっきりしてよりクラシカルな印象でした。
学士会館は、第二次世界大戦時に軍の施設が置かれたり空襲を受けたり、終戦後にGHQに接収されたり、不遇な時代があったそうなのですが、建物の保存状態は良好でとても美しい。
一般利用できるホテルやレストランなどが入っているので、次回はじっくり滞在してみたいと思います。
- 竣工:昭和3年(1928年)
- 設計:高橋貞太郎(旧館)、藤村朗(新館)
- 指定・登録:国の有形文化財
- 住所:東京都千代田区神田錦町3-28
上野駅周辺
上野駅を含む周辺エリアは名建築の宝庫。
特に上野恩賜公園内には、世界的に有名な建築家が手掛けた建築もあり、見応え十分でした。
上野駅
東京に住んでいたころ、地元に帰省するときに上野駅を利用していましたが、当時は建築なんかにまったく興味がありませんでした。
そのため上野駅には、古臭くて地味だなという印象しかありませんでしたが、関東大震災後に再建された現在の駅舎はレトロでいい雰囲気だし、VIP専用の乗車口や鉄骨がむき出しの天井など、昔の意匠が随所に残っていて、知れば知るほど魅力的な駅。
- 竣工:昭和7年(1932年)
- 設計:ー
- 指定・登録:ー
- 住所:東京都台東区上野7
東京文化会館
ル・コルビュジエが設計し世界文化遺産のひとつにもなっている国立西洋美術館の向かい側にあるのが、この東京文化会館です。
その設計に関わった前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の3人は、ル・コルビュジエの弟子だったというから面白い。
重厚なコンクリート造りのこの建物は、モダニズム建築好きにはたまらないと思います。
- 竣工:昭和36年(1961年)
- 設計:前川國男、坂倉準三、吉阪隆正
- 指定・登録:ー
- 住所:東京都台東区上野公園5-45
黒田記念館
画家・黒田清輝の作品を展示している黒田記念館は、学士会館と同じスクラッチタイルを用いた外観になっています。
スクラッチタイルは昭和初期に流行っていたそうですね。
古代ギリシャ・ローマ建築を思わせる列柱を2階部分にだけさえりげなく用いることで、ゴテゴテしすぎず、名建築が多い上野エリアにうまく調和しているように感じました。
建築と黒田清輝作品を楽しんだ後は、隣接する上島珈琲店で休憩するのも良さそうですね。
- 竣工:昭和3年(1928年)
- 設計:岡田信一郎
- 指定・登録:国の登録有形文化財
- 住所:東京都台東区上野公園13-9
旧東京音楽学校奏楽堂
- 竣工:明治23年(1890年)
- 設計:ー
- 指定・登録:国の重要文化財
- 住所:東京都台東区上野公園8-43
東京国立博物館
中国の王宮のような立派な屋根が特徴の東京国立博物館は、銀座の和光本店と同じ渡辺仁の設計によるもの。
この日は遠目からサラッと見て終えてしまったのですが、大理石で造られたエントランスの階段は、よくロケ撮影に使用されている、と後日知りました。
じっくり見学すればよかったと少し後悔しています。
- 竣工:昭和13年(1938年)
- 設計:渡辺仁
- 指定・登録:国の重要文化財
- 住所:東京都台東区上野公園13-9
池袋駅周辺
池袋駅周辺は個性的な名建築がたくさんありました。
池袋PARCO
池袋PARCOは、2016年に改修されているものの、ベース設計は村野藤吾によるもの。
今までそのことを知らなかったのですが、権威に弱い僕は、池袋PARCOを見る目が変わりました。
正面の凹凸のデザインは当時のものを継承しているのだそうです。
約60年前、建築家村野藤吾氏により設計された本建築は、巧みな凹凸構成でファサードを形成し、その隙間から昼間は外光を取入れ、夜間は内光を柔らかく放たせることで、「光」を建築の重要なファクターとして昇華させ、池袋の“顔”とも言うべき象徴的な存在としました。今回の改修計画では、新たな素材を纏いながらも新築当時の凹凸構成を継承し、その隙間から放たれる「光」を再解釈することで、新たな池袋の象徴を作り出しています。
株式会社YAMAGIWA
池袋というビッグターミナル駅において、再開発で取り壊されなかったのは奇跡のようなもの。
名建築家の手掛けた作品を現代風にブラッシュアップさせたのは非常に素晴らしいと思いました。
- 竣工:昭和34年(1959年)
- 設計:村野藤吾
- 指定・登録:ー
- 住所:東京都豊島区南池袋1-28-2
ウイトピア 池袋駅北口前公衆トイレ
ウイトピアは、豊島区制90周年記念事業として「誰もが利用しやすい明るいトイレ」を目指して改修された、池袋駅北口前の公衆トイレ。
デザインと装飾を手掛けたのは、美術作家の植田志保さん。
明るいカラーリングと軽やかなオブジェのおかげで、なんとなくダークなイメージのあった池袋駅西口の印象が華やかなものに変わりました。
街のイメージを変えてくれる建築やパブリックアートは素敵ですね。
ウイトピアの下はウイロードという通路になっていて、線路下を通って東口側へ抜けることができます。
- 竣工:令和4年(2022年)
- 設計:植田志保
- 指定・登録:ー
- 住所:東京都豊島区西池袋1-28-7
豊島清掃工場
池袋でひときわ目を引く豊島清掃工場の巨大煙突。
高さはなんと210メートルもあるそうです。
池袋駅から徒歩5分の位置に、こんな巨大な清掃工場施設があるなんてちょっと不思議ですね。
定期的に見学会が開かれているようなので興味ある方はぜひ。
- 竣工:平成11年(1999年)
- 設計:石川島・大林・鴻池建設共同企業体
- 指定・登録:ー
- 住所: 東京都豊島区上池袋2-5-1
ルボア平喜南池袋ビル
南池袋公園の向かい側にあるルボア平喜南池袋ビルは、サイズ感こそ大きくはありませんが、ゴテゴテに装飾され異様な雰囲気をまとったインパクト大のオフィスビルです。
設計者は、梵寿綱さん。
合理的なモダニズム建築もいいけど、こういう装飾性の高い建築も斬新で観ていて楽しいですね。
エントランスの天井、床、壁まで超独特。一見の価値アリです。
- 竣工:ー
- 設計:梵寿綱
- 指定・登録:ー
- 住所: 東京都豊島区南池袋2-29-16 ルボワ平喜
文京区
東京カテドラル聖マリア大聖堂
僕の大好きな建築家の丹下健三が手掛けた東京カテドラル聖マリア大聖堂。
滑らかな曲線と上品に輝く外観が本当に美しい建築です。
高さは40メートル近くもあり、抜群の存在感があります。
俯瞰から見ると十字になっているそうです。
写真撮影はNGですが、内部の見学も可能。
内部は、荘厳で神秘的な空気に包まれていて、大都会東京にいることを忘れてしまいそうでした。
見学後は清らかな気持ちで一日を過ごすことができました。
- 竣工:昭和39年(1964年)
- 設計:丹下健三
- 指定・登録:ー
- 住所: 東京都文京区関口3-16-15
第2弾に続く
ちょっと長くなってしまったので、続きは別の記事に分けようと思います。
第2弾は丸の内周辺の名建築巡りが中心となるので、ぜひそちらもご覧ください!