長野県は東京などの都会に比べると「アート作品に触れられる機会は少ない」と勝手に決めつけていましたが、実は美術館と博物館の数が345館で日本一なのだそう。
観光資源が豊かで人の往来が多い長野県。地域活性化や文化交流をねらいとして、多くの博物館・美術館がつくられてきた経緯があるのです。さらに、広い敷地を確保できることや晩年を長野県で過ごした文化人がいることなども、大きな理由といえるでしょう。
出典:Go NAGANO
言われてみるとたしかに、パリに最も愛された日本人画家の作品だけを展示している美術館や、日本で初めて山岳をテーマにした博物館や、地域にゆかりのあるなどアーティストの美術館など、個性的で魅力ある施設が結構ありました。
今回は僕が行ってみて良かったと思った美術館&博物館を5つ紹介したいと思います。
軽井沢安東美術館(軽井沢町)
実業家・安東泰志氏の藤田嗣治コレクションを展示・収蔵する個人美術館として2022年に誕生した「軽井沢安東美術館」。
エコール・ド・パリを代表する画家である藤田嗣治の作品だけを展示している美術館は世界初なのだそうです。
藤田嗣治が長年描き続けた題材の少女や猫や宗教の絵画の他に、戦争画や中南米を訪れた際に描いた絵画などもあり、おそらく全部で100点近くも展示されていました。
少女や宗教画からは、藤田嗣治の代名詞である「乳白色の肌」や面相筆で描かれた細い輪郭線を存分に観ることができました。
乳白色の肌は、近くで観ると滑らかで透明感があってとても綺麗。
この独特な表現方法と技術がパリで人気を得た理由のひとつなんですね。
訪れた日は1月の平日だったため、比較的空いていてゆっくり楽しむことができました。
冬は軽井沢全体が閑散期なので、この時期に訪れるのがオススメですよ。
- 名称:軽井沢安東美術館
- 住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43番地10
- 電話番号:0267-42-1230
- 営業日:水曜日休館/4~10月10:00~17:00、11~3月10:00~16:00
- URL:https://www.musee-ando.com/
ハーモ美術館(下諏訪町)
諏訪湖畔ののどかな場所にある「ハーモ美術館」は比較的小さな美術館ですが、所蔵コレクションはビックネームばかり。
アンリ・ルソーやアンドレ・ボーシャンなどの20世紀前半に活躍した素朴派画家(画家以外の生業がある人)の作品を多く所蔵しています。
個人的にこの日のお目当てはアンリ・ルソーの作品。
ルソーは遠近法や接地面をうまく描くことができず、生前はかなり酷評されていたとか。
たしかに「人物と木の比率がおかしくない?」と思う場面は多いのですが、愉快な人物や生き生きしたリアルな草花はとても魅力的で、彼の描いた絵は見ている人を明るい気持ちにさせる力があるように感じました。
その他にも、アンリ・マティスの切り絵をもとに刷られたステンシル版画や、シャガールの木版画シリーズや、ダリの不思議の国のアリスの挿絵などがあり、見応え十分の内容になっています。
- 名称:公益財団法人 ハーモ美術館
- 住所:長野県諏訪郡下諏訪町10616-540
- 電話番号:0266-28-3636
- 営業日:年中無休/4月~9月9:00~18:00、10月~3月 9:00~17:00
- URL:http://www.harmo-museum.jp/
長野県立美術館(長野市)
2021年に名称が変わり建物もリニューアルした「長野県立美術館」では、長野にゆかりのある作家の作品や風景画を中心とした近現代美術のコレクション展や企画展を観ることができます。
2023年1月に訪れたときは戸谷成雄氏の「戸谷成雄 彫刻」が展示されていました。
チェーンソーで木の表面を刻んだ大型の木彫作品や卒業制作の人体彫刻など、戸谷氏の初期から現在に至るまでのさまざまな作品に触れることができました。
この日は時間がなくて観ることができませんでしたが、長野県立美術館では郷土作家作品や信州の風景画などを収蔵しているので、「信州好き」の人はぜひ一度訪れてみてください。
- 名称:長野県立美術館
- 住所:長野県長野市箱清水1-4-4
- 電話番号:050-5542-8600
- 営業日:
- URL:https://nagano.art.museum/
大町山岳博物館(大町市)
北アルプス山麓に位置する大町市は、昔から山との深い関わりがあり、日本初の登山ガイドグループ(大町登山案内組合)はこの地で誕生しました。
そんな大町市にある「大町山岳博物館」は、日本で初めて山岳をテーマにした博物館として1951年に開館。
地元の大学や他の博物館と協力して、雷鳥やカクネ里氷河などをはじめとした、山岳に関する専門的な研究や展示を行っています。
常設展では、北アルプス登山の歴史や大町の山岳文化を育んだ人々の紹介、このエリアにすむ生物の紹介などがあり、大人だけではなく子供の学びの場としてもオススメ。
敷地内にある付属園では、特別天然記念物である雷鳥を飼育し繁殖技術の確立を目指しています。
これだけ見応えがある展示にも関わらず入館料は大人450円!
山や自然が好きな人にはたまらない博物館です。
- 名称:大町山岳博物館
- 住所:長野県大町市大町8056-1
- 電話番号:0261-22-0211
- 営業日:月曜日休館 ※月曜が祝日の場合は開館し翌日が休館。7月 8月は無休/9:00~17:00
- URL:https://www.omachi-sanpaku.com/
菊池哲男山岳フォトアートギャラリー(白馬村)
「菊池哲男山岳フォトアートギャラリー」は、30年以上に渡って北アルプスを撮り続けた山岳写真家・菊池哲男氏の作品が、常時20~30点展示されています。
モルゲンロートで真っ赤に染まる白馬岳や、雲海から顔をのぞかせる後立山連峰など、幻想的な写真の数々。
気象条件や地形などを知り尽くした菊池氏だからこそ撮ることができる写真たちです。
一般の人が立ち入ることの難しい厳冬期の早朝や夜中に撮影された作品が多数あり、見応えは十分!
冬期は休館してしまいますが、30分~1時間程度で見終えられるので、白馬観光のついでに立ち寄るのにオススメです。
- 名称:菊池哲男山岳フォトアートギャラリー
- 住所:長野県北安曇郡白馬村北城4787
- 電話番号:0261-72-7021
- 営業日:水曜日休館 (7・8月無休)、冬期休館/4月~10月9:00~17:00 、11月10:00~16:00
- URL:http://azumino-artline.net/museum/kikuchi
おわり
意外にも、藤田嗣治やアンリ・ルソーやマティスなどの超有名アーティストの作品を観ることができる長野県。
結構すごくないですか?
今回紹介した5施設はどこもオススメなので、近くに来たらぜひ立ち寄ってみてください!
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