「バックカントリー」は迷惑行為?遭難者を一括りに非難するのは的外れ

バックカントリーは迷惑行為?

バックカントリーとスキー場の閉鎖区域の違いを知っていますか?

バックカントリー客の遭難事故のニュースが流れるたびに、「なぜ立ち入り禁止の場所に?」とか「自業自得…」とか「救助不要…」とか。

冒頭の違いをよく理解していない人たちが、遭難者を一括りにしてバッシングする様子は、もはや冬の風物詩と化しています。

スキー場のロープや滑走禁止の看板を超えて閉鎖区域(滑走禁止エリア)に侵入したのならルール違反ですが、白馬エリアではバックカントリーゲートから入山して滑走する行為は禁止されていません。

むしろ、安全に楽しむためのHAKUBA VALLEY Safety Tipsというエリア全体の統一ルールをまとめています。

しかしながら、ニュースを発信しているメディア側が、曖昧な表現や間違った伝え方をしているために「バックカントリー滑走 = すべて悪」と認識されてしまうことも。

自分自身もバックカントリー滑走をするので、間違った報道や一方的なバッシングを見るたびにモヤモヤし、残念な気持ちになっていました。

この記事では、バックカントリーとスキー場の閉鎖区域の違いなどを簡単にまとめるので、バックカントリー滑走に無縁の人でもなんとなく理解してもらえると嬉しいです。

※各スキー場やエリアにはローカルルールが存在し、今回の記事内容が当てはまらない場合もあります。

目次

そもそもバックカントリーとは

バックカントリーとは
栂池自然園から入山し、白馬乗鞍岳を目指すバックカントリー客

バックカントリーとは、管理も整備もされていない自然エリアを指し、スキー場とはまったく別の場所になります。

これを違う言い方にすると管理区域外になります。

そのエリアを自ら登ってスキーやスノーボードで滑走する行為は、冬季登山の範疇です。

昭和初期にスキー場ができる以前は、みんな手つかずの自然の中で遊んでいました。

バックカントリーとは
天狗原付近

スキー場が整備された現代でも白馬エリアでは、滑走技術や知識や専用道具があることと、前途のルールを守ることが前提で、バックカントリー滑走が認められています。

しかも、100年の歴史を持つガイド組織が存在していたり、国際大会が開催されたり、上質なパウダースノーを求めて日本だけではなく海外からもたくさんのバックカントリー客がやってきます。

バックカントリーは大切な観光コンテンツのため、地域が一体となって盛り上げようという機運があるのです。

バックカントリー滑走をするときは登山口から入山するのがルール

バックカントリーゲート(登山口)
バックカントリーゲート(登山口)

八方尾根、⽩⾺五竜、栂池高原、⽩⾺乗鞍、白馬コルチナの各スキー場の頂上付近にはバックカントリーゲート(登山口)が設けられているので、バックカントリー滑走をしたい人は、リフトやゴンドラを乗り継いでここから入山しなければいけません。

そしてこの場所で、登山届を提出したり、ビーコンチェッカーでビーコンが正常かどうかを確認したり、スキーやスノーシューに履き替えたりと、各々が入山準備を整えます。

スキー場境界線
スキー場境界線

たまに、バックカントリーゲートからではなくスキー場境界線のロープなどを越えてバックカントリーエリアや滑走禁止エリアに出る人がいますが、これは明らかなルール違反で、ごく少数の人たちだけがやっていること。

まともな人は、定められたルール通りにバックカントリーゲートから入山しています。

ほとんどの人は準備を整えたうえで入山している

バックカントリー滑走をする以上は、そこでの行動はすべて自己責任で、スキーヤー・スノーボーダーもそのことは理解しています。

そのためほとんどの人たちは、十分な滑走技術、アバランチギア(ビーコン、プローブ、ショベル)の携帯とその使い方の訓練、リスクに対する正しい知識、天候判断、山岳保険への加入など、事故の確率を下げるための準備を整えたうえで入山しています。

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スキー場の管理区域と閉鎖区域の違いとは

冬のスカイラインコース。中腹から見上げる
スキー場のコース内を管理区域という

スキー場によって管理された滑走可能エリアのことを管理区域と呼びます。これは普段みなさんが滑っているコースのことで、営業時間内かつリフト券を持っていれば滑走できます。

八方尾根スキー場コースマップ
出典:八方尾根スキー場公式サイト

その一方で、スキー場内だけれども雪崩などの危険がある場所は閉鎖区域滑走禁止エリアとされ、立ち入ることも滑走することも禁止されています。

このようなエリアには、滑走禁止の看板やロープが張られています。

閉鎖区域や滑走禁止エリアを滑ることは禁止されているので、ここで起きた事故については「自己責任」だけでは済まされません。

メディアは使用する用語を統一し、正しい報道が必要

用語概要
管理区域外バックカントリーエリア。スキー場とは無関係。
閉鎖区域
(滑走禁止エリア)
スキー場内だが雪崩などの危険があるため立ち入り禁止されている場所。
コース外??? どこを指しているのか曖昧。

よくニュースで「スキー場のコース外でバックカントリーをしていた男性が遭難しました」という内容を目にしますが、「コース外」という用語を使ってしまうことで、それが「管理区域外」なのか「閉鎖区域(滑走禁止エリア)」なのかが判断できません。

前途の通り、バックカントリー滑走はスキー場とは無関係なので、「スキー場のコース外」という言葉を使うのはふさわしくありません。

メディアには、バックカントリーや管理区域外滑走はルール違反でない旨を伝えたうえで、用語を統一し正しく報道をしてもらいたいです。

もちろん大前提として、バックカントリーでの事故は自己責任で、遭難してしまったら救助隊や関係者などに迷惑をかけてしまうことも事実です。

だからといって関係者以外が、「捜索費用を全部請求しろ」や「バックカントリーを禁止しろ」や「滑走禁止エリアでなにやってんだ」などとネット上で批判するのは的外れなこと。

(そもそも、遭難して命の危機にある人や亡くなってしまった人に対してネット上で誹謗中傷する行為自体が信じられません)

正しく報道されることで、一般の人への理解も深まり、「バックカントリー滑走 = すべて悪」という偏見やバッシングも少なくなるはずです。

おわり

バックカントリーでしか味わえない感動がある
バックカントリーでしか味わえない感動がある

バックカントリー滑走と聞くだけで非難したり、ルールを守っている人とルール違反をしている人が同列に扱われてしまっていることに違和感を感じてこの記事を書きました。

歴史がある素晴らしい遊びであり、大切な観光コンテンツでもあるバックカントリーへの理解が深まることで、ネット上での誹謗中傷が少なくなればいいなと思います。

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