6月、コペンハーゲン、ベルリン、パリ、ウィーン、イスタンブールのヨーロッパ5都市を巡る2週間の旅行に行ってきました。
コロナ禍でしばらく海外に行けなかったので、現地で美味しいものを食べたり、美術館巡りをしたり、現地の風土や雰囲気を感じたり、異国での体験を楽しみにしていました。
それらと同じぐらい楽しみにしていたのは、愛用のフィルムカメラ「Leica M3」でヨーロッパの街並みを撮影すること。
気合いを入れて結構前から準備をしてきたので、レンズは「エルマー 50mm F3.5」、「エルマー 90mm F4」、「キヤノン セレナー 35mm F2.8L」の3本を、フィルムは20本以上持っていきました。
トラブルもありましたが、無事に現像が終わったので、旅の思い出を振り返ってみたいと思います。
コペンハーゲン編、ベルリン編、パリ編に続いて、今回は「ウィーン」編。
他の都市の記事は、記事の下部にリンクを貼ってあるので、ぜひ最後までご覧ください。
クラシカルで調和のとれた美しい街、ウィーン
ウィーンの街並みはクラシカルでどこを見ても絵になる建物ばかり。
街の雰囲気を表すと「格式高い」「伝統的」「落ち着いている」「気品がある」といった感じです。
街全体が「骨董品」や「歴史博物館」のようでした。
「リングシュトラーセ」という環状道路に囲まれた旧市街には、15世紀に建てられたシュテファン大聖堂や、18-19世紀のマリア・テレジアやフランツ・ヨーゼフ1世らの時代に建てられた豪華な建物がたくさんあります。
そんな豪華で歴史的な建物が建ち並ぶ旧市街には馬車が走っており、これがまた街並みと良く合うのです。
こんなに馬車が似合う街はそうそうないと思います。
パリでは馬車のフンが道端に放置されたままになっていたのですが、ウィーンにはほとんどなくて清潔でした。
その理由は、馬のお尻付近にフンをキャッチするカバーが取り付けられていて、街が汚れないように工夫されていたから。
犬のフンもほとんど見かけませんでした。
公的な規制もあると思いますが、ウィーンの人々の美意識の高さが、街の美しさや調和に繋がっているように感じました。
パリでは、ロマネスク様式とゴシック様式の教会を見学しましたが、ウィーンではバロック様式の「聖ペーター教会」 を見学。
外観は素朴な造りだったものの、ゴージャスで黄金色に輝く内観はまるで天国のようでした。
入場は無料で、しかもパイプオルガンの生の音色を聞くことができるので、近くに来た人はぜひ立ち寄ってみてください。
音楽と芸術の都
ウィーンといえば音楽と芸術の都。
ウィーンが世界に誇る名画の数々、街に溢れる名建築など、僕らはこれらを楽しむためにこの街を訪れました。
18世紀に建てられたベルヴェデーレ宮殿の上宮は美術館になっていて、19世紀以降のオーストリア絵画コレクションが充実。
特にクリムトコレクションは世界最大で、24点もの作品を収蔵しています。
ウィーンに新たな芸術の潮流を作り、数多くの傑作を生み出したクリムトの最大傑作と言われる「接吻」は、門外不出で日本で観られる機会はないと思うので、このヨーロッパ旅行でどうしても観ておきたい作品でした。
黄金の背景や男性は装飾的に描かれていて、優しくうっとりとした女性の表情が印象的。
近くに寄って細部を観たり、離れた場所から俯瞰的に観たり、ベンチに座ってボーっと眺めてみたり、たくさん時間をかけて楽しませてもらいました。
何時間でもずっと観ていたくなるような、不思議なパワーを持った作品でした。
ベルヴェデーレ宮殿には、エゴン・シーレやオスカー・ココシュカといったウィーン分離派のコレクションも充実している他に、ダヴィッドが描いた白馬に乗ったナポレオン「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」などもあり、見応えがありました。
世界に4枚存在するナポレオンの絵ですが、ベルヴェデーレ宮殿にあるとは知らなかったので、見つけた瞬間はテンションが爆上がりでした。
レオポルド美術館もウィーン旅行で楽しみにしていた目的地の一つ。
ここもウィーン分離派の作品がメインで展示されていて、特にエゴン・シーレのコレクションが充実しています。
今年の1~4月に東京都美術館で開催されたレオポルド美術館のシーレコレクションの企画展に行ったことがきっかけで、レオポルド美術館にも行ってみたいと思うようになりました。
「ほおずきのある自画像」のうち左側の作品はその企画展で観たのですが、やっぱりこの作品は2枚揃ってこそ価値のある作品。
レオポルド美術館では基本的に写真撮影がOKで、日本に来なかった作品もたくさんあったので行ってよかったです。
クリムトらが『新しい芸術』目指して立ち上げたウイーン分離派の拠点となる施設がウィーン分離派会館。
建築家ヨゼフ・マリア・オルブリッヒの設計によって1898年に誕生しました。
金色の月桂樹の球体や入口上部のメッセージなどに、ウィーン分離派の思想が反映されています。
洗練されていて存在感がありましたが、思っていたよりも小さい建物でした。
ウィーン分離派会館のすぐ近くにある旧カールスプラッツ駅の駅舎は、オットー・ワーグナーが設計を手掛けた名建築。
エメラルドグリーンとゴールドの配色や、細部の装飾がすごく綺麗で、アール・ヌーボー様式の傑作と言われるのも頷ける建物だったのですが、壁に落書きがされていたり周囲に人が少なかったので、なんだかただの廃墟のようにも見えました。
ウィーンが誇るオペラハウスの一つ「フォルクスオーパー」でオペレッタを鑑賞しました。
コミカルで大きなリアクションが面白く、舞台と客席の間で演奏するオーケストラの音楽が、ストーリーを引き立てて臨場感を高めてくれます。
フォルクスオーパーは、ウィーン国立歌劇場よりも敷居が低く初心者にも優しい劇場ですが、来場者の中には綺麗なワンピースを着飾った女性も多くいて、全体的に華やかな雰囲気。
本場の空気感に触れることができていい経験になりました。
フォルクスオーパーの最寄り駅であるフォルクスオーパー駅は、アールヌーボー様式の美しい駅でした。
緑と白のコントラストが美しくて、人がいないタイミングを狙って何度も写真を撮りました。
1897年にオープンしたプラーター公園は、映画「第三の男」にも登場する人気観光スポットです。
歴史が長い遊園地なだけあって、レトロでノスタルジックな雰囲気が広がる良い空間でした。
入園料は無料なので、その空気感だけ味わうのもいいのですが、せっかくなのでプラーター公園名物の大観覧車に乗りました。
高さ65メートルの高さからはウィーンの街並みを一望でき、遠くにはシュテファン大聖堂も見えました。
カフェ文化が根付いた街
1683年にウィーンを包囲していたトルコ軍が残していったコーヒー豆を使って開いたカフェが、ウィーンのカフェ文化の始まりなのだとか。
ウィーンにとってのカフェはただコーヒーを飲むだけの場所ではなく、一日中新聞や本を読んだり、仲間と意見交換をしたり、トランプやビリヤードで遊んだり、酒を飲んだりするなど、長い歴史の中で独特な文化が生まれました。
カフェ文化は、2011年にユネスコの無形文化遺産に登録されるほど、ウィーンの街に根付いています。
1876年にオープンし、ウィーンの中で『一番豪華なカフェ』とも言われる「カフェ セントラル」は 、フロイトも通った文芸サロン的なカフェ。
高い天井、大理石で造られた柱と壁、豪華で繊細な装飾。
とにかく美しくて、古き良きウィーンの伝統が感じられる素晴らしいカフェでした。
こちらは、クリムトとシーレが初めて会った場所と言われている「カフェ ムゼウム」。
ウィーン分離派会館のすぐ近くにありました。
ウィーンの歴史あるカフェでは、ウェイターやウェイトレスが自分の仕事にプライドを持ち、堂々と威厳に満ちて立ち振る舞っていたのが印象的でした。
レインボーパレード
ちょうどウィーン訪問中にLGBTQのレインボーパレードが開催されていて、ウィーン市庁舎周辺にたくさんの人が集まっていました。
レインボーパレードはオーストリア最大のデモで、例年約20万人が参加するほど盛り上がるそうです。
ウィーンに対しては良くも悪くも伝統を重んじる保守的なイメージがあったので、このようなイベントと盛り上がり方は意外でした。
レインボーカラーが街を埋め尽くし、とても賑やかな雰囲気。
上半身裸になる人も結構いて、みんな楽しそうにしていました。
人気の観光地や伝統的なカフェだけではなく、旅行をきっかけにこうしたウィーンの一面を知ることができてよかったです。
おわり
古き良き伝統と多様性が共存するウィーン。
4日間の滞在でしたが、時間と体力の限界まで色々なところを見て回れたので大満足。
ウィーンは全体的に落ち着いた雰囲気でゆっくり観光できるので、年を取ってからも行きやすい街だと感じました。
ウィーンの後は、トランジットで半日だけトルコのイスタンブールに寄りましたが、夕方だったのでフィルムカメラで撮影したのはたったの2枚だけ。
そのため、ヨーロッパ旅行のフィルム写真で振り返るシリーズはこれで終わりにしたいと思います。
ヨーロッパ旅行に行く際は、ターキッシュエアインズを利用するとお得なサービスを受けられます。その概要は下記の記事にまとめたので、興味がある人はご覧ください。
コペンハーゲン、ベルリン、パリの記事は下記をご覧ください。