6月のヨーロッパ旅行中、愛用していた「ライカ M3」をうっかり落としてしまい、ファインダーがブラックアウト…。完全に視野が真っ暗になり、撮影不能に。
カメラ店で相談したところ、修理自体は可能だけど、ファインダーの載せ替えにはかなりのコストがかかるとのこと。現実的ではないと判断し、やむなく新たなカメラを探すことになりました。
そんなとき、選んだのが【ライカ M5】。
いわゆる”不人気ライカ”とも言われるモデルですが、調べていくうちに「これはむしろ、実用派にはうってつけなのでは?」と思うようになり、思い切って購入しました。
世間ではやや不人気と言われがちなM5ですが、実際に使ってみるとその印象は一変。
この記事では、そんなM5の魅力を余すことなくご紹介します!
ライカ M5とは? 実用性を重視した異端のM型ライカ

ライカ M5は、1971年から1975年までのわずか4年間しか製造されなかった、ちょっと珍しいM型ライカです。
生産台数は約3万台。
クラシックカメラとしては少数派に入ります。
このM5、実はライカ初のTTL(レンズを通して測光する)露出計を内蔵したM型。
さらに、シャッターダイヤルの配置も含め、操作性を大きく見直したモデルなのです。

ただ、そのぶんボディサイズは少し大きめで、従来のM型とはだいぶ印象が違います。
そのため、当時は保守的なユーザーからの評価が割れてしまい、「不人気モデル」というレッテルを貼られることに…。
しかしそのおかげで、今ではM型ライカの中でも比較的リーズナブルな価格で手に入るのが魅力。
良品でも18万円台〜と、他のM型よりかなり現実的です。
平面的でモダンなデザイン

実際に手に取ってみると、確かにM3やM2に比べて大きめ。
しかしそのぶん丸みのある形状や、適度な重量感が手に馴染みやすく、個人的には「思ったより持ちやすいな」という印象でした。

見た目は他のM型とはひと味違い、どこかモダンでインダストリアルな雰囲気。
マットブラックの仕上げが美しくて、特にクローム仕上げのレンズと組み合わせるととても映えます。
クラシックなM型の「丸み×コンパクトさ」が好きな人にはちょっと異質に見えるかもしれませんが、これはこれで“機能美”というジャンルの完成形なんじゃないかと思います。
ライカ M5のスペック
スペックだけを見ると、他のM型と大きく違うようには見えませんが、「TTL露出計搭載」+「操作性の工夫」がこのカメラを特別なものにしています。
- 種類:機械式レンジファインダーカメラ
- ファインダーフレーム:35mm、50mm、90mm、135mm
- ファインダー倍率:0.72倍
- シャッタースピード:1秒~1/1000秒
- シャッター:布幕フォーカルプレーンシャッター
- 露出計:TTL式スポット測光
- 電池(露出計用): 625Aアルカリ電池
- マウント:ライカMマウント
考え抜かれた操作性。ライカ M5が実用機と呼ばれる理由
操作性に優れたシャッターダイヤルの位置

M5の操作性の良さを語る上で欠かせないのが、シャッターダイヤルの配置です。
他のM型だと、カメラ上部にある小さなダイヤルをつまんで操作する必要がありますが、M5はちょっと違う。
カメラ前面から少し突き出した大型ダイヤルが特徴で、右手の人差し指でクルクル回せるんです。
このおかげで、カメラを構えたままでもシャッタースピードを直感的に調整可能。
わざわざ構え直さなくていいため、スナップ撮影とか、旅先でとっさに撮りたいシーンでも、このダイヤルの存在がすごく効いてきます。
直感的に操作できるTTL方式の露出計

もう1点便利なのが、TTL方式の露出計。
ファインダーの中にシャッタースピードと露出状態が表示されるので、いちいちファインダーから目を離す必要がないのがポイント。
ファインダー内には、「設定中のシャッタースピード」と「露出メーター」が表示され、2本のラインが交差すれば適正露出。
露出オーバーなら線が左に、アンダーなら右に動くというわかりやすさで、露出の判断がサッとできて、テンポよく撮影できます。

設定に迷ってチャンスを逃す心配が減るのは、実用機として大きなアドバンテージ。
これがあるだけで、撮影体験がガラッと変わります。
スタイルにこだわりながらも実用性を求めるユーザーにとって、まさに理想的な一台です。
注意点:沈胴レンズとの相性とアイレット位置
M5はとても実用的なカメラですが、いくつか注意すべきポイントもあります。
とくに沈胴式レンズとの相性には気をつけたいところ。
というのも、M5はシャッター幕のすぐ前に露出計のアーム(測光機構)があるため、レンズを沈胴させたときにこのアームとぶつかってしまう可能性があるのです。
例えば、ズミクロンやエルマーなどの沈胴式レンズは、撮影後にレンズを沈めるのが前提の構造。
しじゃしM5では、沈胴はしない方が安全。
場合によっては内部パーツにダメージが出てしまうので、使用する際は十分に注意してください。

さらにもうひとつ、ストラップの取り付け位置にも個性があります。
M5の初期型は、なんとアイレット(吊り金具)が片側にしかないため、ストラップが「縦吊り専用」になります。
縦吊りのバランス感には賛否あるものの、開発元のライツ社が導き出した設計思想として受け止めれば、M5らしい個性の一つとも捉えられます。

後期型では横吊り対応に改良されているので、気になる方は購入時に型番や製造年をチェックするのがおすすめ。
ちなみに、純正のレザーケースを使えば、初期型でも無理なく横吊りができるので、そこまで大きなデメリットではありません。
まとめ:M型ライカの中でも異端、でも実用性は随一

一部では「不人気ライカ」として知られているM5ですが、実際に使ってみるとその操作性と実用性の高さには目を見張るものがあります。
もちろん、M3やM2のようなクラシックな美しさとはちょっと違います。
しかしそのぶん、「撮る」という行為にフォーカスした道具としての完成度は、間違いなく高い。
独特のデザイン、優れた露出計、操作性にこだわったシャッターダイヤル――。
これらが組み合わさることで、M5は“直感的に撮れる”カメラとして真価を発揮します。
しかも、現在の相場は他のM型よりずっと現実的。
初めてのM型ライカとしてもおすすめできる一台です。
これからどんどん撮影に持ち出して、自分だけの相棒に育てていきたいと思っています。
M5と相性抜群のレンズも紹介中!
M5と組み合わせたいおすすめのMマウントレンズも、こちらの記事でまとめています。
クラシックレンズ派の方は、ぜひあわせてチェックしてみてください。

