ドラマ「名建築で昼食」を観てから建築に興味を持ち、その後、ブルータスの「建築を楽しむ教科書」を読んでから近代名建築を巡って写真を撮りたいと思うようになりました。
近代名建築といえば東京やみなとみらい周辺の歴史ある建物のイメージが強かったのですが、調べてみると自宅から近い長野県松本市にもたくさんあることがわかったので、フィルムカメラのニコン S3 を引っ提げて8か所ほど巡ってきました。
今回はそれらの建築の紹介と、記事の最後のほうに使用したカメラやレンズの情報を載せたいと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
松本市の近代名建築
松本市には、大正や昭和初期の近代建築・名建築が多く残っています。
なんでこんなに多いんだろうかとちょっと不思議だったのですが、恐らく古くから城下町として栄えていたことで技術力が高い大工が多かったことや、第二次世界大戦で空襲を受けなかったことなどが理由なんじゃないかと思っています。
やっぱり歴史ある街にはロマンがありますね。
そんなわけで、松本城周辺に点在している近代名建築を歩いて回ってみました。
宮島耳鼻咽喉科医院
松本市近代遺産に指定されている宮島耳鼻咽喉科医院は、ヨーロッパ貴族の邸宅を思わせるような、繊細で上品な佇まいと、青空に映える赤い屋根が印象的でした。
大正3年に竣工したこの美しい洋館が、現役の医院と住宅として使われているというから驚き。
遠目から見ても存在感は抜群。
建物の維持管理は大変だと思いますが、ぜひ後世まで残してもらいたいと思う名建築でした。
- 竣工:大正3年(1914年)
- 指定・登録:松本市近代遺産
- 住所:長野県松本市城東2-1-4
- 電話番号:0263-39-1345
旧制松本高等学校
国の重要文化財に指定されている旧制松本高等学校は、大きな木に囲まれた緑豊かな場所にあります。
これには「森の中から思想と文化が生まれる」というドイツ的な理念を反映していたのだとか。
校舎は、西洋の建築様式を木造で再現したそうです。
規模や質、そして保存状態が非常に良いので、近代建築好きにはたまらない建物だと思います。
戦後の学制改革で旧制松本高等学校は信州大学となり、その後昭和48年4月に移転。
現在は松本市があがたの森文化会館として保存・活用していて、かつての校舎内を見学できるようになっています。
外装と同じエメラルドグリーンに塗られた窓枠や板張り、手すりの雰囲気とか最高ですね。
建物内の1室には、当時の教室を再現したスペースなんかもあります。
あと、学生服の貸し出しもやっているので、コスプレ撮影をしながら国の重要文化財を堪能できてしまいます。
- 竣工:大正9年(1920年)
- 指定・登録:重要文化財
- 住所:長野県松本市県3-1-1
- 電話番号:0263-32-1812
旧第一勧業銀行松本支店
旧第一勧業銀行松本支店ビルは、昭和12年に竣工され、平成15年までみずほ銀行松本支店として使われていました。
JR松本駅から松本城へ向かう道の途中にあり、重厚な外観と窓枠の大きなアーチが大きな存在感を放っています。
ヨーロッパの教会を思わせるどっしりした佇まいは、ぼく好み。
ぜひ注目してみてください。
- 竣工:昭和12年
- 指定・登録:登録有形文化財、松本市近代遺産
- 住所:長野県松本市大手3-5-15
- 電話番号:0263-38-1133(アルモニービアン)
NTT東日本松本大名町ビル
昭和5年に竣工したNTT東日本松本大名町ビル(NTT東日本松本営業所)。
レリーフなどの装飾はなくシンプルでモダンな造りだけれど、1階外壁部分の赤っぽいタイルがアクセントになっていて、レトロな雰囲気を放っていました。
段違いになっている窓は階段部分と思われますが、リズミカルなデザインでいいですね。
- 竣工:昭和5年(1930年)
- 指定・登録:松本市近代遺産
- 住所:長野県松本市大手3-3-9
旧松岡医院
現在、かわかみ建築設計室のオフィスになっている旧松岡医院は、コンパクトながらもどっしりした佇まい。
国の登録有形文化財に指定されています。
外観にはレリーフが施されていて、とても華やかな印象です。
この建物を手掛けたのは大工棟梁の佐野貞次郎氏で、なんと先程紹介した宮島耳鼻咽喉科医院と同じなんだそうです。
松本市の洋風建築に大きな影響を残した人物なんですね。
- 竣工:大正13年(1924年)
- 指定・登録:登録有形文化財
- 住所:長野県松本市大手5-1-3
- 電話番号:0263-33-8200(かわかみ建築設計室)
ミドリ薬品
昭和2年に竣工したミドリ薬品は、医薬品や介護用品を扱う現役の薬局。
建物全体が重厚な石造りかと思いきや、よく見ると正面以外は一般的な木造建築になっています。
これは看板建築と呼ばれるもので、関東大震災後の防火対策のひとつとして広まっていったそうです。
細部に華やかな装飾が施されていてこだわりが感じられます。
- 竣工:昭和2年(1927年)
- 指定・登録:ー
- 住所:長野県松本市中央3-3-15
- 電話番号:0263-32-1559
塩井乃湯
大正時代に建てられた看板建築が美しい塩井乃湯。
塩井乃湯は現役の銭湯で、外観だけではなく、脱衣所や浴室もとてもいい雰囲気なので、疲れを癒しながら建築を堪能できるオススメスポットです。
- 竣工:大正初期
- 指定・登録:ー
- 住所:長野県松本市大手3-6-3
- 電話番号:0263-32-1507
松本市営住宅上土団地
旧松本市役所跡地に建てられた松本市営住宅上土団地。
戦後このあたりは、ハイカラで文化的なエリアとして栄えたそうですが、市役所の移転やモータリゼーションの影響、さらには大型商業施設の開発などで次第に衰退。
現在は当時の輝きを取り戻そうと「大正ロマンのまち」を掲げたまちづくりに取り組んでいるのだとか。
その象徴的な建物である上土団地は2000年に完成したので近代建築ではありませんが、旧松本市役所をモデルにしたそう。
大正ロマンを感じられる素敵な建物でした。
- 竣工:平成12年(2000年)
- 指定・登録:ー
- 住所:長野県松本市大手4-4-1
おわり
今回は、ニコン S3 ブラックペイントとNIKKOR S・C 50mm F1.4という組み合わせで松本の名建築巡りをしてきました。
S型ニコンは丈夫でコンパクトなので、今回のようにいろいろ歩き回って撮影するようなケースで使いやすいと思いました。
またブラックペイントは塗装が剥がれると、地の真鍮が露出してきてさらにカッコよくなるのですが、その経年変化も楽しめるので、細かいことを気にせず撮影に集中できてよかったです。
その一方で建築を撮る際に50mmレンズでは制約が大きいので、35mmや28mm程度の広角レンズが欲しいと思ってしまったり。
充実感と課題感の残る名建築巡りとなりました。
使用した機材
今回使用した機材のリンクを貼っておくので、よかったら参考にしてみてください。