1980年から20年に渡って製造された、Nikonが世界に誇るフラッグシップ機「F3」。
F3は、最上位機種「F一桁台」のひとつで、プロカメラマンが過酷な状況下で使用することを想定しているので、機能性と堅牢な作りが特徴です。
そんなハイスペックなカメラが、いまは数万円で購入できてしまうのは嬉しい限り。
今回は眺めているだけでも心を満たしてくれるF3の魅力を語りたいと思います。
「Nikon F3」スペック
形式 | 電子制御式35mm一眼レフカメラ |
撮影モード | 絞り優先・マニュアル |
露出計 | 中央部重点開放測光 |
シャッター | 8秒〜1/2000秒、バルブ、タイム チタン幕横走りフォーカルプレーンシャッター 緊急用1/60秒機械式シャッターあり 作動時間10秒のセルフタイマーあり シンクロ速度1/80秒 |
電源 | ボタン電池のSR44 or LR44 2個 |
対応レンズ | ニコンFマウント 完全に対応:Aiレンズ、Ai-Sレンズ、AiAFレンズ ※非Aiレンズは機能制限あり ※絞り環がないGレンズは使用不可 |
ファインダー | 交換式 視野率100% |
大きさ | 幅148.5mm x 高さ96.5mm x 奥行65.5mm (ボディ) |
重量 | 約700g(ボディ) |
特筆すべきポイント
- 絞り優先AEが使える
- 電池がないとシャッターが切れないが、万が一電池切れをしても緊急用の1/60秒機械式シャッターが使える
- ファインダーを交換できる
- ずっしりと重い (僕が使っているレンズ「AI Nikkor 35mm f/1.4」と合わせると約1.1kg。タウンページ1冊分です)
外観・特徴
僕が持っているのは「Nikon F3/T」という種類。
「T」とは「チタン」の意味で、ボディの外装がチタン製になっています。
チタン製になったことで、堅牢性や防塵・防滴性能が向上しています。
写真ではわかりにくいのですが、ボディの表面が少しザラザラした質感になっています。
それ以外は通常のNikon F3とまったく同じ構造です。
ちなみに、チタン製だからといって「頑丈だなー!」という実感は特になく、落としたり、ぶつけたりしたときに、その威力を発揮してくれるのだと思います。
プロダクトデザインは、アルファロメオやBMWなどの車のデザインを手掛けたイタリア人デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ氏によるもの。
ボディに入った「赤いライン」はジウジアーロ氏がF3に採用して以降、現在に至るまでNikonカメラの象徴になっています。
F3には「スタイリッシュ」という言葉がピッタリ当てはまります。
40年前のデザインとは思えないほど洗練されていて、とにかくカッコいい!
兄貴分のカメラである「F」は直線的なデザインで、後継機の「F2」はそこから少し丸みを帯びながらも無骨で男らしいデザインが特徴的。
F3はそれぞれの良いところを継承しつつ、スタイリッシュさを加えたようなカメラです。
F3を使っていて一番実感することは、完成度の高さと安心感!
巻き上げレバーのスムーズな動きは本当に感動します。
僕はF3の他にもRollei35とCanon EFというフィルムカメラを持っていますが、質の良さではF3の圧勝。(そもそも、Rollei35とCanon EFと比較するのは間違いなのですが…。)
Rollei35は何となく華奢というか繊細なので、壊れないようにヒヤヒヤしながらそーっと巻き上げています。
それに対してF3は、ガンガン撮って、ガンガン巻き上げて。
登山のような過酷な状況でも安心して使えるので心強いです。
あと、「カシャーン」という甲高いシャッター音が素晴らしくて、骨伝導で指先から全身に響き渡るような感覚を覚えます。スマートフォンでは決して味わえない「写真を撮っている」という実感や楽しさを得られるカメラなのです。
デザインも素晴らしく、さすがNikonのフラッグシップ機です。
F3はファインダーを交換することができます。
「DW-3」というウエストレベルファインダーに交換すると、ローアングルの撮影ができるようになり、背の低い高山植物を撮りやすくなります。
ウエストレベルファインダーに写った景色をデジカメで撮るという遊びにハマっています。
F3の伝説
F3が発売した1980頃のライバル機には、キヤノンのニューF-1とペンタックスのLXがありました。
F3は、当時の雑誌やプロカメラマンの中では「まだ信用に足らない電子シャッターをニコンがプロ機に搭載しやがった」と酷評されることもあったとか。
つまり「大事な場面でシャッターが切れなくなったらどうするんだ」「壊れやすいんじゃないか」という見方があったのです。
ところが、中古フィルムカメラ店の店主の話では「故障していない状態で買い取りすることが多いのは圧倒的にF3。他の2機種は壊れているものばかり」なんだそうです。
ニコンの方向性が間違っていなかったことやクオリティの高さが、発売から40年経って再確認できるエピソードです。
おわり
この記事を書くにあたって、F3を手元において眺めていますが、本当に良いカメラです。
当時のフッラッグシップ機がわずか数万で買えるなんて良い時代です。
作りとデザインが良くて所有欲を満たしてくれる。ずっと大切にしていきたいと思います。
▼その後、F2も買っちゃいました