フィルムカメラ時代のレンズフードは、デザインや機能が多種多様でとても奥が深い世界です。
数千円~数万円で手に入ることから「沼」に足を踏み入れやすい世界でもあります。
気が付けば僕もライカのレンズフードを5個所有。
それらを使っている中で、それぞれの良し悪しが見えてきました。
レンズフードの役割と魅力

強い日差しを遮ることで、フレアやゴーストの発生、コントラストの低下を防ぐことができ、写真のクオリティに大きな効果をもたらすレンズフード。

また、カメラやレンズを落としたりぶつけたりしても、レンズフードがあることで破損のリスクを軽減することができます。

現代のデジタルカメラのレンズフードはプラスチック製の味気ないデザインが多く、大口径レンズに合わせてサイズも巨大化。
いかにも工業製品といった雰囲気で、可愛げがありませんね。

その一方で、フィルムカメラ時代のものはほとんどが金属で作られていて、メーカー名などはしっかり刻印されています。
デザインや作り込みが秀逸で、まるで工芸品のような美しさがあります。
使うだけでなく、集める楽しみも得られるアイテムなのです。
ライカのレンズフード
ライカ(ライツ社)製のレンズフードは、ペイント、材質、刻印違いなど多彩なバリエーションが存在します。
世の中にはコレクターズアイテムにもなっているものもありますが、今回紹介するのは定番アイテムばかり。
ぜひレンズフード探しの参考にしてみてください。
ライカの定番レンズフード 【IROOA】

IROOA(イロア)はライカの定番レンズフード。
E39口径でズミクロンやズマロンなどの多くのライカレンズに使用できるので、とりあえず1個持っておいても損はないと思います。
IROOAにはフードの長さ違いや刻印違いでさまざまなバリエーションが存在しますが、こちらは初期型より少し短く、対応レンズが4種類刻印されているタイプ。
僕が持っている初期型のライカ M2とほぼ同年代のものだと思われます。

ラッパ型の形状が美しくて、ズミクロン 50mm f2 1st(M)にとても良く合います。
ライカの黄金期に製造されたフードだけあって、美しさや作りの良さは抜群。
ダブルフックをレンズ先端に引っかける仕組みになっているので、レンズにしっかり固定されます。

ズマロン 35mm f3.5(M)にも適合し、見た目のバランスも非常に良いです。
しかし、フードの挿入口が絞りリングに少しだけ被さってしまって、絞り操作がしにくいのがちょっと残念なところ。
エルマー 50mm f3.5(M)に装着しても同じでした。

ちなみに、IROOAにはE55(フィルター径55mm)のレンズキャップを装着できます。
プラスチック製にはなりますがE55のレンズキャップは現行純正品を入手できるので、ライカのアイテムで揃えたいという人にはオススメです。
クラシカルな円柱形状 【ITOOY】

ITOOYは、エルマー 50mm f2.8やf3.5用のレンズフード。
ラッパ型のIROOAに対して、円柱型の外観が特徴です。
ライカ製品の中でも特にシンプルな形状でありながら、ブラックペイントとシルバークロームのバランスが絶妙で、独特でクラシカルな雰囲気を持ったフードです。
見た目が凄く好みだったので、エルマー 50mm f3.5(M)をまだ持っていないときにゲットしてしまいました。

ただし、IROOAをズマロンのときと同じで、エルマーに装着すると絞り操作が若干しにくくなります。
エルマーの専用フードなのに、ちょっと残念ですね。
ちなみに同じE39口径なので、ズミクロン 50mmにも装着できますが、しっかり奥まで入りきらないのでガタつきます。(ダブルフック式だが2つ目のフックまで挿入できない)
また、その影響でケラレが発生する可能性もあります。
エルマー 50mm f3.5用(L)フード 【VALOO】

エルマー 50mm f3.5(L)用のVALOOは、エルマーを引き伸ばし機に取り付けたときの絞り操作用のリングとして作られたもの。
エルマー用のフードといえばFISONが有名ですが、これを装着すると絞り操作がしにくいというかほぼ不可能です。
それに比べVALOOは、絞りの操作性を向上させるだけではなく、フードとしての役割も果たす優秀な一品です。

重さは約60グラムもありやや重いですが、無骨な見た目がいかにも往年のライカといったところ。
ブラックペイントもカッコいいです。

取り付け方は、フード側の欠けている部分とレンズの絞りレバーが合うようにします。
フードの先端にある絞りリングを回すと、レンズの絞りレバーも連動し、クリクリっと小気味よく回転してくれます。
ライカらしい手の込んだ作りと操作感が写欲を爆上げしてくれます。
エルマーの使い手には強くオススメしたいレンズフードです。

フードの先端はA36口径でエルマーの純正キャップが装着できるのも嬉しいポイント。
先日たまたまブラックペイントの純正キャップをゲットしたので、統一感のあるセットが完成しました!
すべてを同じ時代性で統一できるのは、きっとライカファンやアンティークカメラファンにはたまらないはずです。
4焦点距離に対応するズームフード【FIKUS】

FIKUSは、35/50/90/135mmのレンズに対応するズームフード。
A36口径(フィルター径36mm)なので、これ1個でLマウントのエルマー 35mm、50mm 、 90mmなどに使用できます。

何役も果たしてくれる一方で、ズームさせた際のフードのガタつきが気になり、購入から2年が経ちますがほとんど使っていません。
やっぱりそのレンズ専用に作られたフードを買い集めていく方が、実用面では良いのかもしれません。
ライカの万能レンズフード 【12549】

最後に紹介するのは、1994年に復刻したエルマー 50mm f2.8(M)用フードの12549。
なんといっても魅力は、E39径ねじ込み式なので、エルマー 50mm f3.5(M) やズミクロン 50mm や35mm、ズマロン35mmなど、多くのオールドライカのレンズに装着できる点です。

クロームメッキ仕上げのリッチな外観、コンパクトなサイズ感も非常に魅力。

ズマロン 35mm f3.5(M)+ 12549
ねじ込み式なので、どのレンズに装着しても絞り操作の邪魔にならず、超実用的。

ズミクロン 50mm f2 1st(M)、エルマー 50mm f3.5(M) 、ズマロン 35mm f3.5(M)を所有する僕にとって、ついにベストなレンズフードを見つけました。

レンズとの一体感が抜群で、よく見なければフードが付いているかわからないほど。

IROOAやITOOYとサイズ比較をするとこんな感じです。
コンパクトな分、遮光性はやや劣るかもしれませんが、携帯性に優れているため旅行などで大活躍してくれそうです。

う~ん、カッコいいですね。

沈胴させるとこんなにコンパクトに。

E39口径の純正メタルレンズキャップを装着できることも個人的には嬉しいポイント!
1950年代に製造販売されたライカ M2やエルマー 50mm f3.5(M)との相性を考えると、純正のメタルキャップを使いたかったのです。
番外編 ワルツ社製 ズマール用フード

ズマールの純正フードは正方形の大きく野暮ったい形をしていて、あまりカッコよくありません。
そのため、いつかズマールを買ったときに使おうと思って、ワルツ社製のフードを買っておきました。
他の記事でも書きましたが、アクセサリー類は、カメラやレンズよりも入手するのが困難な場合もあるので、状態の良いものを見つけたときは即買うのが鉄則です。
おわり

オールドレンズのフードには、長い歴史の中でさまざまなものが作られてきたため、多様なデザインが存在し、実用性もさることながら、カメラやレンズを彩ってくれたり、手に取って眺めるだけでも心を満たしてくれます。
そして、数千円~数万円で購入できることから、沼に陥りやすい危険な世界でもあります。

僕も使いやすいものや美しいものを求めていった結果、その数がどんどんが増えていき、ライカ以外のメーカーも含めると全部で15個以上も所有するまでになりましたが、エルマー用の万能フード「12549」に出会えたおかげで、一旦落ち着きそうです。
みなさんが「沼」に陥る前に、ベストな一本を見つけられることを願っています。

