2023年6月、5か国を巡る2週間のヨーロッパ旅行に行ってきました。
ヨーロッパの街並みをフィルムカメラで撮りたい僕にとって一番頭を悩ませたのは、いかにして空港でのX線検査を回避するかということ。
最近のX線検査装置は、ISO1600以下のフィルムであれば感光しないように作られていて、僕が使っているISO100~400までのフィルムであれば問題ないそうなのですが、それでも「100%大丈夫なわけではない」のです。
日本から持っていくフィルムを感光させないためには、X線検査を回避しハンドチェックまたは目視での検査をお願いするしか方法はありません。
ヨーロッパに行くにあたって、事前に情報を集めて対策を練り、旅行に臨みました。
今回の記事では、フィルムが感光するとどうなるのか、X線検査を回避するにはどのような対策があるのか、対策と交渉の結果など、みなさんが今後海外旅行に行く際に参考になりそうな情報をお届けしたいと思います。
感光するとどうなるのか
まず、写真フィルムが感光するとどうなってしまうのか。
感光するとフィルムの一部に帯や全体に色被りが発生し、写真本来の写りが損なわれてしまいます。
上の写真は、フィルムカメラを始めたばかりのときに、うっかり裏蓋を開けて感光させてしまった写真です。
せっかく撮影した写真が台無しにならないように、絶対にX線検査は回避したいところ。
家でできる事前対策と空港での対応
X線検査を回避するために、事前に家でできる対策と空港での対応があります。
色々とリサーチをし、実際に僕が行なった対策をそれぞれまとめてみたので、参考にしてみだください。
事前対策
- 怪しまれないようにフィルムはパッケージに入れたままにしておく
- 同じく怪しまれないように透明なビニール袋などに入れて視認性を高めておく
- 「写真フィルムなのでX線検査を避けてほしい」とのメッセージを英語で記載してフィルムと同じ袋に入れておく
家でできる事前対策を反映すると、上の写真のようになります。
この写真だけを見ると透明性抜群で「完璧な対策」のように感じますが、結果はどうだったのか。
ちなみに、メッセージには以下のように書いてあります。
Phtography film(写真フィルム)
Do not X-ray.(X線は使わないでください。)
Please hand check.(ハンドチェックをお願いします。)
Thank you!(ありがとう!)
「Film」だけでは意味が通じないので、必ず「Photography film」と書くようにしてください。
X線検査対策として、X線防止袋というものが販売されていて、そこにフィルムを入れる方法もありますが、中身が見えないことでX線の強度を上げられ、かえって逆効果になることもあるのだとか。
空港での対応
家での事前対策と合わせて空港では以下の2つを行ないました。
- 「機内預け入れ荷物」ではなく、「手荷物」として機内に持ち込む
- 手荷物検査のときに、ハンドチェック・目視検査での対応をお願いする
空港別の結果
上記の対策を施し、各空港での結果はどうだったのか。空港別にまとめていきます。
利用した空港は、羽田空港 → イスタンブール空港(トランジット) → コペンハーゲン空港 → ブランデンブルグ国際空港 → シャルル・ド・ゴール国際空港 → オルリー空港 → ウィーン国際空港 → イスタンブール空港の順で、係員への説明はすべて英語で行ないました。
羽田空港(日本・東京) 【OK】
まずは羽田空港です。
さすがは日本の空港なだけあって、こちらの意図を汲み取っていただき嫌な顔一つせずにハンドチェック・目視検査に応じていただきました。
フィルムはすべて未開封の状態だったのでそのことを確認してあっさりOK。
カメラに入っていたフィルムは、僕が係員の目の前でシャッターを切って確認してもらいました。
イスタンブール空港(トルコ・イスタンブール) 【OK&NG】
行きも帰りもトランジットでイスタンブール空港を利用しました。乗り継ぎまでに時間があり一旦チェックアウトしたため、そこで手荷物検査を受けました。
行きは、まったく聞き入れてもらえずにX線検査へ。
帰りは、カメラこそX線検査行きとなりましたが、未使用&撮影済みフィルムに関してはハンドチェック・目視検査に応じていただきました。
行きと帰りで違う結果になったため、対応する係員によって変わるようです。
コペンハーゲン国際空港(デンマーク・コペンハーゲン) 【OK】
北欧の国はなんとなく優しいイメージがありますがそのイメージ通りハンドチェック・目視検査に応じていただきました。
その検査がちょっと独特で、小さな紙をフィルムにこすり付けて何らかの反応を見ていました。
ブランデンブルグ国際空港(ドイツ・ベルリン) 【NG】
天下のライカのお膝元ドイツ。
フィルムカメラに対する理解が深いかと思いきやX線検査行き。
担当の係員には、ハンド・目視検査に応じてくれそうな雰囲気があったのですが、その係員が上司を連れてきて「ハンドチェックはできない」と言われてしまいました。
オルリー空港(フランス・パリ) 【NG】
フランスでは、ハンドチェック・目視検査に応じてもらえませんでした。
しかも、係員の女性はこちらの説明や意図をまったく理解できていない様子で、かなり怪訝な表情をしていました。
パリの空港はものすごく混雑していたので、わざわざ時間のかかるハンドチェックをしてくれそうにはありませんでした。
ウィーン国際空港(オーストリア・ウィーン) 【NG】
X線検査行き。
旅の終盤で、もうすでに何度もX線検査に通されているので、粘りの交渉を試みましたが、受け入れてもらえず…。
6つの空港を利用してみた感想と今後の対策
- 優しく理解がありそうな係員がいる検査ブースを選ぶ
- 混雑していない時間帯と検査ブースを狙う
- 飛行機での移動を減らし、電車移動を検討してみる
- フィルムを現地で調達し、撮り終ったら現地で現像する
6つの空港を利用してみて感じたことは、ハンドチェック・目視検査に応じてもらえるかどうかは係員と混雑状況次第なところが大きいということ。
同じ空港でも係員が変れば対応も変わるので、正直3と4以外は運任せです。
検査ブースの係員に「このX線検査機はISO1600以下のフィルムなら影響ないよ」ということをほぼすべての場所で言われました。
なのでそれを覆す明確なエビデンスを提示できれば、もう少し交渉の余地があったかもしれません。
時間に余裕があって、さらにパリのような大都市へ行くのなら、フィルム販売店や現像所で「現地調達」するのが確実な方法です。
計4回X線検査機を通した結果
計4回X線検査機を通した結果は、見事に感光していました。
撮影した写真の3割程度にX線の影響が見られました。
上の写真が特にヒドい状態だったのですが、写真全体にフィルターのようなものがかかっていてモヤモヤっとしています。
しかし幸いにも、写真によって感光度合いに差があり、全然気にならないものもありました。
例えば上の写真です。
感光度合いに差が出る理由はわからないのですが、適正露出で撮影できたものは影響が少なく、アンダー気味もしくはオーバー気味で撮影したものに影響が大きく出てしまったのかもしれません。
理由はどうであれ、高い確率でX線の影響を受けるので、海外に行かれる際には先程挙げた対策を実施し、少しでも感光リスクを減らせるように取り組んでみてください!
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