カラーフィルムとモノクロフィルムを携えて、初夏のシドニーを歩いた。
古いレンガ造りの建物から、まぶしい海の光まで。
シドニーは、カラーでもモノクロでも絵になる「写真映えの街」だった。
この記事では、旅の中で巡った フィルム撮影スポット を、機材メモや撮影のポイントと合わせて紹介したい。
シドニー旅の機材構成

今回の旅には、フィルム2台+デジタル1台を持っていった。
Nikon F2 フォトミックA(カラー用)

今回の旅でメインにしたカメラはNikon F2 フォトミックA 。
ライカ M2ではなくF2を選んだ理由は、ファインダーの見やすさ、露出計の有無と精度、そして30cmほどまで寄れるなど、使い勝手がいいからだ。
確かに大きくて重たいという弱点はあるものの、その撮影の快適さを考えると、多少の重量は許容できると判断した。
Nikon F2 フォトミックAに、カラーフィルム・フジカラー100 / 400を詰めて使った。
レンズは New Nikkor 35mm f2(Ai改)を中心に、Ai-s Nikkor 50mm f1.8、Ai-s Micro Nikkor 105mm f2.8を持っていったが、実際のところ活躍したのは 35mmだった。
スケール感のある街並みを捉えたいとき、35mmが程よいバランスだったからだ。
CONTAX TVS(モノクロ用)とRICOH GR III(記録用)

モノクロ用にはCONTAX TVSを選んだ。
軽くて持ち運びやすく、Tri-Xとの相性が抜群で、強いコントラストが欲しい場面では特に気持ちよく撮れた。
記録用としてRICOH GR IIIもバッグに忍ばせた。
カラーとモノクロフィルム

フィルムの合計はフジカラー100と400、そして Kodak TRI-X 400 を合わせて15本ほど。
国際線の移動では、コダック社の「フィルム検査案内ラベル」を入れておくとシドニー空港でも丁寧にハンドチェックしてもらえた。
パリやベルリンなど、ヨーロッパ主要空港のハンドチェック対応状況は下記の記事にまとめてあるので、気になる方はこちらもどうぞ。

明暗のコントラストが美しい「オペラハウス」

光と影のコントラストが美しい世界遺産のオペラハウス。
外壁の白いタイルが強い光を弾き返し、晴天の日には驚くほど立体感のある写真が撮れる場所だった。
特にTRI-Xの黒が深く締まる感じが気持ちよく、明暗のコントラストがピンと張り詰めたような緊張感を作り出す。

オペラハウスの周りには、観光客やカモメが絶えず行き来し、「撮るものがなくて困る」という瞬間が一度もなかった。


治安が良いので、パリのように常に周囲を気にする必要がなく、撮影に集中しやすかったのもありがたかった。

時間があれば、建築ツアーで内部を見学するのもオススメだ。
撮影可能で、光の入り方が美しく、外観とはまた違った魅力がある。
質感と形状がユニークな「シドニータワーアイ」

シドニータワー・アイは、高層ビルの隙間から顔を覗かせる姿が印象的で、都市を撮るのが好きな人にはたまらない被写体だ。
質感も形状もとてもユニークでちょっとレトロ。
フィルムで撮ることで独特の味わいが生まれる。
カラーでもモノクロでも撮りがいがあり、歩きながら何度もシャッターを切ってしまった。

高さ250メートルもあるので、ある程度全体を写すのなら、広角レンズがオススメだ。
素のシドニーを楽しめる「サリーヒルズ」

サリーヒルズは、今回の旅で最も気に入ったエリアだ。
レンガ造りのテラスハウスが整然と並び、人気のベーカリーやカフェが点在している。
オペラハウスのような観光地感はないが、その分、生活感が漂い普段のシドニーがよく見え、歩いているだけで楽しい街だ。

訪れたのはよく晴れた日の午前中。

柔らかい光が建物と街路樹に降り注ぎ、明暗コントラストが強調されて本当に美しい光景だった。


普段使うレンズは50mmが多いがここでは、New Nikkor 35mm f2が抜群に使いやすかった。
レンガ造りの建物やテラスハウスなどとは、35mmの画角が好相性だった。

1975年発売のNew Nikkor 35mm f2は、AI化以前のモデルではあるものの、AIやAI-s版と光学系はほぼ同じで、描写は十分シャープ。

中古価格は1〜2万円と安く、コストパフォーマンスが高いレンズだと改めて感じた。
ロマネスク建築「クイーン・ビクトリア・ビルディング(QVB)」

1898年に建てられたクイーン・ビクトリア・ビルディングは、シドニー中心部にあるショッピングモールで、外観からして圧倒されるほどの存在感を放っている。
重厚なロマネスク建築は周囲の近代的なビル群とはまったく趣が異なり、街の中でひときわ際立つ佇まいだ。

QVB は内観も圧巻で、建物の中に一歩入ると天井のガラス越しの光がフロア全体を温かく照らしている。
天井が高く、光が均一に降りてくるため、室内でも無理なく撮影できた。

アーチの連なりや繊細な装飾がとても美しく、カラーでもモノクロでも楽しめる。
古い建築が好きな人にはたまらない場所だと思う。
青がまぶしいビーチリゾート「ボンダイビーチ」

市内からバスで30分のボンダイビーチは、シドニーを代表する海辺の景色が広がる場所だ。
ボンダイビーチと、次に紹介するマンリービーチでは、海の青さや光の強さをしっかり写し取りたかったこともあり、撮影はすべてカラーフィルムで臨んだ。

砂浜と海面の照り返しが想像以上に強く、明るい光が常にフィルムに降り注いでいたため、ISO100のフィルムが最も扱いやすく、階調のバランスもきれいに整った。

ビーチ沿いや芝生エリアでは、日光浴を楽しむ人や散歩する家族、ゆったり過ごす人々など、平日にもかかわらずローカルが思い思い時間を過ごしていた。
落ち着いた雰囲気の「マンリービーチ」

サーキュラーキーからフェリーで30分で行けるマンリービーチ。
ボンダイビーチと並ぶ人気のビーチリゾートだが、マンリービーチの方がやや落ち着いた印象だ。

私たちもビーチでのんびり過ごす予定だったが、この日は、気温40℃に迫る記録的な暑さで、風も強く、ドライヤーの「強」を浴び続けているような過酷な状況だった。
写真をパパっと撮って、すぐにカフェに避難した。

海沿いは反射が強いので、ボンダイと同じく低感度フィルムが使いやすい。
そして、強風による砂害や、容赦なく近づいてくるカモメには十分注意が必要だ。
特に食べ物を手にしていると一瞬で狙われるので、撮影中やフィルム交換の最中に持ち歩くのは避けたほうがいい。
シドニーの街を見渡せる「フェリーの上からの景色」

サーキュラーキー発のフェリーは、近郊のビーチへ向かうだけでなく、船上からシドニーの街を見渡せる最高の移動手段だ。
35mmレンズであれば、オペラハウスとハーバーブリッジを一緒に撮ることができる。
今回撮った中でも特にお気に入りの写真は、このフェリー上で撮ったものが多かった。

海風が強く、レンズキャップや小物が飛ばされそうになる瞬間もあったが、そのぶん写真には旅特有の生々しさや荒々しさが残った。
船は思った以上に揺れるため、できれば ISO400 のフィルムが安心だ。
新旧建築が入り混じる「シドニー中心部」

シドニー中心部は、歴史ある石造りの建物とガラス張りの高層ビルが混在し、場所によって表情がまったく異なる。

カラーでは観光写真のようになりやすい場所でも、モノクロにすると形が強調され、抽象的で力強い写真になるのが面白かった。

夜でも街が明るく、ISO400があれば十分撮影を楽しめる。

日本ではあまり見ない形状の建物や、独特な影の出方をするものが多く、シャッターを切り続けてしまうほど魅力のあるエリアだった。


まとめ:また必ず戻りたいと思える街・シドニー

美しい街並みと豊かな自然、カフェ文化、アートが生活に根付き、また必ず戻りたいと思える街。
治安が良く、街も人も温かく、ゆったりと撮影に集中できた今回の旅は、改めてフィルムカメラの楽しさを感じさせてくれた。
2年前のパリでは常にスリや置き引きに注意しながら撮った記憶があるため、その対比もあり、今回の撮影環境は本当に快適だった。

唯一の反省点を挙げるとすれば、レンズを3本も持っていったのに、実際に使ったのはほとんど35mmだけだったこと。
交換が面倒で、重さも気になり、結局ホテルに置きっぱなしになることが多かった。
次回はもう少しシンプルな装備で臨みたい。
「カメラ × 旅」に関する記事も他に書いているので、興味のある方はぜひそちらも覗いてみてほしい。

